エルヴィス・プレスリーのクリスマス・アルバム。
本作は57年に発売された同名アルバム(ゴスペル4曲、クリスマス・ソング8曲で構成)からゴスペルの4曲を除き、66年に録音されたB1と69年に録音されたB5を加え、曲順を変え70年に再発されたもの。
プレスリーさんといえば黒人のリズム&ブルースと白人のカントリー&ウエスタンを融合させて、いわゆるロックンロールを誕生させたパイオニアの一人ですが。
57年当時の人種差別などがまだまだ強烈な封建的社会では、そのようなスタイルで伝統的なクリスマス・ソング(賛美歌など含む)を歌うことは、神への冒涜と受け取られました。
ポートランドやロスアンゼルスなど、多くのラジオ局で本作は次々と放送禁止となり。
さらには隣国カナダの放送局まで影響が波及したのでした。
現代から考えれば、このような騒動自体が笑い話ですが。
腰を振りながら黒人のような歌唱をする「エルヴィスによるキャロルは不謹慎だ」という反応は、当時のキリスト教国では特殊な反応でもなかったのでしょう。
もちろん一方ではプレスリーを熱烈に支持する人々(特に若い世代)もおり、本作は米ビルボード1位、イギリスでも2位と大ヒットしました。
またカナダのCKWS局のDJが本作を1日中かけまくり、リスナーから意見を電話で募集したところ、 電話してきた人の93%がこのアルバムの放送に賛成したそうです(wikiより)。
楽曲解説
A1:プレスリーさんの代表的なクリスマス・ナンバー。(曲の詳細は当ブログ、The Beach Boys「Christmas Album」をご参照)
A2:本作発売当時の放送禁止騒動で最も問題となったのが、この曲とB3だったそうです。ちなみにプレスリーさん自身がそもそも非常に敬虔なプロテスタントだったとか。(曲の詳細は当ブログ、The Temptations「Christmas Card」をご参照)。
A3:当ブログのクリスマス特集を繋ぐ名曲「ホワイト・クリスマス」。本作でのアレンジは、ドリフターズが53年に録音した同曲に良く似ています。(曲の詳細は当ブログのクリスマス特集各回をご参照ください。)
A4:プレスリーの代表曲「Hound Dog」「Jailhouse Rock」などを書いた作曲家コンビ、リーバー&ストーラーによる本作のための書き下ろし。
レコーディング最終日に1曲足りなかったため、スタジオに居合わせた2人に即席でクリスマスソングを作ってくれ、とプレスリーさんが頼んだところ、その場で書き上げられたそうです。
A5:作曲家のバック・ラム、ウォルター・ケント、作詞家のキム・ギャノンの共作。(曲の詳細は当ブログ、Bing Crosby「Merry Christmas」をご参照)
B1:66年に新たに録音された、メンフィス・マフィア(プレスリーさんの取り巻き)の一人、 レッド・ウエストによる作(プレスリーさんとの共作とも言われてます)。
B2:歌うカウボーイ、ジーン・オートリーと作曲家のオークリー・ホルドマンの共作。47年のオートリーさんの録音が初出。当ブログのクリスマス特集のアルバムの中ではビング・クロスビー、フィル・スペクターが取り上げてます。
B3:1865年に米国聖公会の牧師、フィリップス・ブルックスが作詞し、同じ教会にいたオルガン奏者のルイス・ヘンリー・へドナーが作曲したクリスマス・キャロル。A2と並んでプレスリーさんによる歌唱が特に不謹慎とされた。
B4:プレスリーさんやロイ・オービソンなど多くのアーティストにヒット曲を提供したアーロン・シュローダーとクロード・デミトリウスによって、本作のために書かれた曲。
B5:68年の復活後に録音された曲で、特にクリスマス・ソングというわけでもないですが、なぜか収録されました。
72年にブレンダ・リーが録音した有名なポピュラー・ソング「Always on My Mind」の作曲者の一人、ジョン・クリストファー作。
レーベル:RCA Victor 57年→ 日本盤(RVC) 70年
A面
1.Blue Christmas---Bill Hayes , Jay Johnson
2.Silent Night---Joseph Mohr , Franz Gruber
3.White Christmas---Irving Berlin
4.Santa Claus Is Back in Town---Jerry Leiber , Mike Stoller
5.I'll Be Home for Christmas---Kim Gannon , Walter Kent , Buck Ram
B面
1.If Every Day Was Like Christmas---Red West
2.Here Comes Santa Claus---Gene Autry , Oakley Haldeman
3.Oh Little Town of Bethlehem---Phillips Brooks , Lewis H. Redner
4.Santa Bring My Baby Back (to Me)---Aaron Schroeder , Claude Demetrius
5.Mama Liked the Roses---John Christopher
Source:
http://takaoppo.exblog.jp/19710799/